+風俗嬢の金銭感覚+

「風俗の仕事を始めてから、変わったと思うこと」

これについては、化粧の仕方、下着や服の選び方、男を見る目、生活スタイルなど、実にたくさんのことが上げられる。
だが、一番大きく、わかりやすい変化と言えば、金銭感覚だろう。これは風俗嬢を語る上でハズせない話題でもある。

この仕事は、そりゃあ稼げる。よく、風俗店の求人広告に「一日でOLの月収分」などと書かれているが、これはあながちウソでもない。店によっては「一日でOLの月収分を、稼げることもあるんじゃないかな? 半年に一回ぐらいは」っつうのが事実だったりするけども。

私が一日で稼いだ金額の過去最高記録は九万円だが、職種や店の高級度によっては、月収分どころか、二ヶ月分を一日で稼ぐこともあり得るのだ。そんだけ稼いでりゃあ感覚がズレるのは当たり前だ。そして、この感覚のズレは日に日に大きくなっていくものでもある。

たとえば、一日で三万円稼いだとする。それを初めて手にした瞬間の「うっわ、こんな貰っちゃっていいんですか?」という驚愕は、一年も続けているうちに、「うわー、こんだけかよ?」と、違った驚きに変化していくのだ。

それでも私は、高級ソープ嬢ほどのケタ違いの稼ぎがあるわけではないので、一万円は一万円だし、十万円は十万円、普通とはいかないまでも、それなりの金額であるという感覚は残っている。なんせ、いまだに十万単位の買い物をするのにかなりの勇気を必要とするしな。

――それなのに、なぜか千円は百円くらいの価値にしか思えなくなっているのが現状だ。

服を買う、という例で言えば、五万円のスーツを一着買うのはためらうが、五千円の服を十着買うのは全然へーき、ってな感じだ。

以前、「五千円払うから本番やらせて」などとふざけたことを言い出したバカがいたが、これには本気で笑わせていただいた。

ご、ごせんえんでちゅか〜? せんえんさつ五まいでほんばんでちゅか〜? 二時間で四万近く稼ぐこともあるこのわたくしに、五千円で本番をやらせろ? ずいぶん図々しいことおっしゃいますねえおきゃくさーん。

腹の中では大笑いしながらも、表面上はあくまで丁重にお断りしていたが、あまりにもしつこくせがんでくるので、私は自分が最も底意地悪く見える表情でせせら笑いながら、

「今時、そんな小銭でやらせる女がいると思ってんの?」

と言ったみた。とたんに股間がしぼんでたな、奴は。ざまあみろです。笑わせんじゃねえっての。せめて五万くらい積みやがれ(そういう問題じゃないが)。

五千円を小銭だと本気で思ってしまう自分も怖いが、こうした感覚の変化は、仕方のないことなのかもしれない。かつて、財布の中に福沢諭吉が二人以上存在することなどありえなかったこの私が、今では福沢一個小隊(十人編成)を余裕で指揮しているのだから。

けれども、ちょっと高い買い物をする時など、無意識のうちに
「約4本分か……」だの「明日3本つきゃなんとかなるか……」などと、

ちんちんの数で換算してしまうのはどうかと思うが。


――私が今の仕事を始めて、ココロから良かったなあと思うこと。

・コンビニで値段を見ずに物が買えるようになったこと。
・ファミレスで、値段を気にせず食べたいものを食べられるようになったこと。
・猫にモンプチのゴールド缶を買ってあげられるようになったこと。
・万引きしなくても化粧品が買えるようになったこと。


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