+もしも女になったなら+

「俺も女に生まれてたらなあ」

風俗産業に従事している女性であれば、一度は客からこんなセリフを聞くことがあるだろう。私も、これに類する言葉はもう飽きるほど聞いてきた。

「俺も女だったら、絶対こういう仕事やってると思うよ」

中には、こう言えば「ボクは風俗の仕事に対して、何の偏見も持ってませんヨー」ということをアピールできると勘違いしている輩もいる。そうすることでコチラの心象が良くなるとでも思っているらしい。馬鹿が。逆効果もいいとこだっつーの。ほんとに偏見がないとしたら、間違ってもそんなことは言わねえだろうよ。

と、稀にそういった例外も存在するが、たいていの場合、この手のセリフの言葉裏には「女はいいよなあ、楽に稼げて」というニュアンスが込められているのだ。

言葉裏も何も、ハッキリそう言うヤツも大勢いる。なめるなクソ野郎。
こんな言葉を聞かされて、性根の優しいこの私が黙っていられるはずがない。

「じゃあ、そういう趣味のおじさま紹介しましょうか?」
「女じゃなくても、ウリ専って手もありますよ」

そんな親切なアドバイスをして差し上げるのだが、そうすると決まってみんな目をそらして黙り込んでしまう。おいおいなんだよ。「こういう仕事」がやりたいんじゃなかったのかよ。せっかく俺が妥協案出してやってんだろうよ。聞けよ。人の話を。

まあ、楽といえばこんなに楽な仕事はないと思うので(あくまで私にとっては、の話だが)、それはそれでいいとしよう。

ただ、コイツらは「カラダを武器に稼ぎたいんなら、何も女にならなくたっていいじゃん」という基本的なことをわかっていない。

――年がいってる? スタイルが悪い? ノープロブレム。そんなあなたのために、世の中には「フケ専」「デブ専」というものがございます。スジ筋でもジャニ系でもマッチョでもなくとも、どんな種類の男性にも、必ずニーズはあるはずです。もっと自分に自信を持って!

――それ以前に、そんな趣味はない? おっと、仕事は趣味でやるもんじゃあないですよ。甘えちゃダメ! それに、「ウリ専」には、意外にノンケの人が多いそうです。なまじ「そういう趣味」があると、つい自分の好みで客を選んでしまうので、あまり良くないらしいのです。だからあなたも適性充分! 割り切って稼ぎましょう!

別に女じゃなくたって、やろうと思えばいくらでもできるんだよ。新聞の三行広告見ろよ。「男優募集・五十代以上・太め歓迎」なんて募集があるんだから。やれよ。電話かけてみろよ。問い合わせしてみろよ。新しい世界に飛びこんでみろよ。みんなが君を待ってるよ。

「それでもやっぱり女になりたい」
「女になって、フーゾクやりてえんだよ」
「フードルになりてー」

と、あくまで「女になる」ということにこだわるワガママさん。そんなあなたに、ちょっとヒトコト言わせてください。

オマエが女に生まれたって、まず指名は取れねえだろ。オマエが女になったとしても、絶対可愛いわけねえもん。容易に想像つくもん。下手すりゃヤワラちゃん以下だろ。ちょっと考えたらわかりそうなことじゃないか?

もしかしてあなた、自分が女だったら間違いなく可愛い女になってると思ってるんですか?

そのツラで?

その骨格で?

その体脂肪率で?

現状をまったく無視して?

――無理だろ、その遺伝子じゃ。

確かにこの仕事はけしてルックスだけが全てではないので、多少の、かなりの難アリでも、それなりに固定客は掴めるでしょう。具体例として、私がおりますし。

ですが、なーんもわかってないで「楽して稼ぎた〜い」なんて言ってる時点でダメです。馬鹿です。頭悪すぎです。客の前でバカのフリをするのはいいことですが、根っからバカじゃ困ります。「まんま」じゃヤバイです。そんな甘えた考えでは、三日も続かないことウケアイです。

とにかく、外見的にも内面的にも、もう少し現状を考慮された方がよろしいかと存じますが、いかがでしょう。

【追記】 私の場合
よく聞かれることなんですが、私は「男になりたい」なんて、今まで一度も思ったことはないです。「もしも、ある日突然男になったら?」「その場で自殺します」っつー感じで。

男が「女になりてー」っつうのはわかるんだけど、女が「男になりてー」っつう気持ちはよくわかんないです。六本木のレズバーとかに勤めてる、タチの人がそう言うのはわかるんですが。

私は、女に生まれて本当に良かったと思ってます。
これで男だったら、絶対女に相手にされてねえもん。モテナイ君の称号を与えられてるはずだもん。膣口があるっていうだけで、私レベルでもとりあえず相手にしてもらえるんだもん。これって超ラッキーっスよ。マジで。

私が女として生まれることができた、この運命に感謝。
そして、世の男性諸氏の間口の広さに乾杯。


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