久々に本気でムカついたぜベイベー。
ライブ感あふれる書き出しで始まる本日の出来事。まあ聞いてくれ。
受け付け終了まで三十分を切った頃、新規の客につくことになった。時間的に見て、これがラストになるだろう。ちゃっちゃと帰りたいので、私は速攻で仕事に向かった。
私の勤める店では、ホテルでの出張プレイが基本。なので、仕事が入ったら客が待つホテルまでとことこ出かけていかなきゃならない。
ホテルは、店から歩いて数分の場所にあるのだが、そこに辿りつくまでの道程は、夜になると酔っ払いやナンパ野郎や痴漢なんかが活動開始するデンジャラスゾーンと化す。ぼんやりしてるとすぐに獲物にされてしまうので、なかなかにスリリングだ。
私も過去、幾度となくターゲットにされてきたが、そういう輩は、気配を感じただけで「あ、来るな」とわかる。背後から近づく足音を聞いてもわかる。なんなんだろうな、あの一種独特の気配は。「視線を感じる」という言葉があるように、人間の第六感ってやつは、実はかなり高性能なのかもしれない。
私の場合、特に自分がイヤだと思うものに対してアンテナが働くらしく、イヤな波長はすぐに察知してしまう。視界にはまったく入っていないはずなのに、「!」って感じで振り向くと、背後の壁にムカデが張り付いてたりとかな。
そんなカンジで、今日もキャッチしたんだイヤ〜なパルスを。「来た来た来たよ」と、それを感じた方向に視線を向けると――案の定、そこにはヤバそ〜な感じの酔っ払い。ヒマそ〜な風情で佇んでやがる。しかもモロに進行方向。どうしてもそいつの目の前を通らなきゃいけないという絶妙なポジション。最悪だ。
ヤツの視線は明らかに私を捉えている。こりゃ間違いなく絡まれる。――しょーがない。もう腹くくるしかねえな。めんどくさいのは山々だが、そいつのためにわざわざ引き返して遠回りをする気にもならない。なぜならそっちの方がよりめんどくさいからだ。
酔っ払いに絡まれるなんてよくあることだ。ここはひとつ大人になって、我慢しようじゃないか。そう思った私は、「何があっても完全シカト」を心に決め、足早にそいつの前を通り過ぎようとした――その時。
そいつは素早い動きで私の右サイドに移動すると、「ねえちょっとぉ」などと言いながら、私の二の腕をそれはそれは勢い良く掴みやがったのだ。
──瞬間、目の前が赤く染まった。
「ああ、頭に血が昇る、というのはこういうことを言うんだなあ」などと考える余裕もなく、腕を掴まれた次の瞬間には、
「何しやがんだてめえ。ふざけんなこの野郎!」
と、カマしていた。自分でも思いがけないほどドスのきいた低い声。咄嗟にこのような言葉が口をついて出てくるというのは、さすがに自分でもどうかと思うが。
痛えんだよこん畜生! 酔っ払いってのはどうしてこう力の加減を知らないんだ! それも何を気安く触ってやがる。きったねえ手で触んじゃねえ! 腕が腐ってもげちまうだろうが! それも直に直に! ああ畜生、ノースリーブのワンピなんか着てるんじゃなかった! おまえみたいなクソ野郎にタダでこの肌に触れさせてしまうとは! うああもったいねえ! しかも「ねえちょっと」だぁ? この野郎。初対面の人間に向かってきく口かそれが!
……と、言いたいことは山ほどあったが、いちいち相手をしてやる義理もない。それに当初は「完全無視」を決め込むつもりでいたはずだ。すでに予定が狂っている。これ以上バカに構うのは面倒、そう判断した私は、さっさとその場を立ち去ることにした。
――立ち去れる、はずだった。
普通なら、このぼやぼやした外見(友人評)と、粗雑でイキオイのある言葉とのギャップに、たいていのやつは引く。引きまくる。――普通なら。
だがしかし、コイツはとことん酔っ払ってんだかバカなんだか、薄汚い手を振り切り、強引に歩き出す私の後を、
「なぁんで怒るんだよぉ〜(笑)」
などとぬかしてついて来やがったのだ。(笑)に注目だ。笑ってやがる。笑ってやがるコイツ。なんだか楽しそうだぞオイ。どうするよ。
……だめだ。だめだコイツ本物のバカだ。この時点でかなり怒りゲージはフルに近い状態だったが、今は勤務中だ。ここで下手にトラブって、余計な時間を費やすことは避けたい。早く仕事に入って早くおうちに帰りたいしな。
わき上がる衝動をこらえながら歩く私の背後を、そいつはしぶとくついて来た。なんなんだその執念。おまえは生まれたてのヒヨコか。私は親じゃねえっつの。来んな。踏むぞボケ。
だけどホテルの前までついて来られるのだけは、マジで勘弁してほしい(理由一:ホテトルと間違えられたくない。←プライド 理由二:そのまま一緒に入って来られても困る)。ホテルに着くまでになんとかお引取り願おうとするが(使用言語:「ついて来んじゃねえよバーカ」等)、そいつは一向に怯む様子がない。困った。
そしてとうとう、ホテル前に到着してしまった。ここまで来ると、さすがに「どーでもいいや」感が高まってくる。……いいやもう。ホテトルと思いたきゃ思いやがれ。これでもうオマエとはサヨナラだしな。アデュー、馬鹿。私は仕事に行くよ。
開き直った私は、そのままシカトしてホテルに入ることにした。それで全てが終わるはずだった。……でもやっぱりそう簡単に終わっちゃくれなかった。奴は、トドメとばかりにこんな言葉を投げかけてきたのだ。
「あれあれ〜?どこ行っちゃうのかな〜?(おどけた口調で)」
カチーン。
――いい音響いたわー。頭の中で。ここ最近で一番いい音色だったかもしれない。
その心底ヒトを馬鹿にしたような言葉と口調は、見事に私の心の琴線に触れた。触れたと言うより掻きむしられた。ハマった。ツボに。ずっぽり。
そして、表面張力でなんとか抑えられていたものが一気にこぼれだした。思わず振り返って、ついつい襟元つかんで、うっかり突き飛ばして「殺されないうちに失せろよボケ」(超低い声)とか言っちまいましたよ。さすがにそいつもおめめまんまるにして驚いてたわ。
脅しでも何でもなく、感情を素直に表に出しただけなんだけど。やあね、殺すなんて物騒なこと言って。こわ―い。
私は別に腕に自信があるわけじゃないし、逆ギレされたら殺されるのはたぶんこっちの方だろう。でも、そんな細かいトコまでいちいち考えていられないくらい逆上してしまった。ナイフとか持ち歩いてなくてよかったよ。もし持ってたら、迷わず刺してそうだもんな。
なんだか、ちょっとしたことでキレるガキどもの気持ちがわかった気がするよ。些細なことでも本気で殺意が芽生える瞬間ってのはあるんだな。中学生よ、今まで馬鹿にしててごめんな。でもほんとに刺しちゃうのはどうかと思うぞ。
まあとにかく、温厚なこの私をここまで怒らせるとはたいした奴だよ。それだけは認めてやる。この仕事をやっているうちに、たいていのバカは笑って許せる余裕を身につけたんだが、やはりバカ強し。かなわねえや、バカには。
──ちっきしょう、今思い出してもムカついてくる。殺せるもんなら殺しておけばよかった。でもこんなことで刑務所入るのも馬鹿らしいんで、誰か十万やるから代わりに殺してくれ(もちろん私に依頼されたことは内密に)。それも考えうる限りの残虐な方法で。あ、だけどトドメは俺が刺したいので、半殺しで頼むわ(罪はそっち持ちね)。
……こんだけ書いてもまだ怒り鎮まらず。まいったねどうも。でもいい加減落ち着かなきゃと思うんで、ここからは敬語を使用してみます。冷静さを装って。ただしマルシア語は禁止でございます。
――そうだ。そういえば。敬語と言えば。あのねー。わたくし、世の女子たちに問いたいんですがね。
痴漢とか強引なナンパ野郎に対して、「やめてください」とか敬語を使うのは間違ってると思いませんか? 悪いのは明らかに相手の方なんだし。言ってみりゃこっちは被害者でしょう。なぜ加害者(特に、痴漢の場合は犯罪者)を敬う必要があるんでしょうか。コチラが下手に出ると、ヤツラは絶対につけあがると思うんですよ。人気のない裏通りなどでは、逆ギレされたら怖いっつーのがあるかもしれませんが、周囲に人がいる状況ならば、遠慮する必要などまったくないんじゃありませんか?
遠慮するどころか、むしろコチラのストレス解消の手段として、積極的に利用するのが望ましいと思います。満員電車の痴漢なんか、もう絶好の獲物じゃないでしょうか(コチラ的に)。
具体的な方法としてはですね、まず、「来た!」と思ったら、わざと大人しくして(ちょっとうつむき加減になるのがベスト)、できるだけ相手を調子に乗らせましょう。そいつが確かに痴漢であることを確認するためなのですが、無抵抗をアピールすることによって、相手を安心させ、より大胆な行為を引き出すことができるので、見極めが早く済みます。
そして「これは絶対に間違いない」という確信を得たら、発車時のドアが閉まった瞬間など、車内がシンとする瞬間を見計らい、車両中に響き渡るような声で思いっきり相手を罵倒してやりましょう。向こうに弁解の余地を与えずに、徹底的に言葉で嬲りつくすのです。
難しく考える必要はありません。「何やってんだよさっきから」や「いい加減にしろよてめえ」「ふざけんなこの野郎」等、感じたままに思うままに、怒りをストレートに表現すれば、それがあなたのオリジナル。思いつくかぎりの悪口雑言を叩きつけてあげましょう。
相手が会社員のようであれば、会社名や部署を聞いたり、「名刺よこせよ。朝イチで会社に連絡してやるから」という脅し文句を添えてみるのも効果大。だいたい涙目になります。
余裕があれば、なるべく過激で粗雑な言葉をセレクトすると良いですね。こういう輩は、たいてい女性に対して間違った幻想を抱いているので、そういうものはきっちり破壊して差し上げるのが親切というものです。間違っても、目に涙を浮かべて「やめて……」などとほざいてはいけません。ヤツらの思うツボです。
もしも相手が聞こえないフリをして、無関係を装おうとした場合には「おまえだよおまえ、何すっとぼけてんだよ」と横っツラを張り飛ばせばOKです。最初から襟元を掴んで、周囲に「私はこのヒトに怒鳴ってますよ」とわかりやすく提示するのもいいですね。
万が一、相手が反論・否定などをしてきたら?
――そのような可能性は低いと思います。私もこれまでこの方法を用いて、相手に反論されたり、否定されたことは一度もありません。つーかさせねえ。絶対にな。
ヤツらはハナから女をナメてかかっているので、予想外に強気に出られると、どう対処していいのかわからなくなるようです。なので、たいていは真っ赤になって黙り込みます。
しかも、コチラはさっきまで大人しくしていたか弱い婦女子です。信じていたところを突然裏切られた状態ですので、衝撃はかなりのものになるはず。最初に無抵抗を装うのはそのためでもあります。
言うだけ言って、ある程度気がおさまればそれで良いでしょう。どうしてもダメだという時は、駅員に突き出して社会的に責任をとらせるのも手ですね。が、その場合、いろいろ事情を聞かれたり何やらめんどくさいので、時間がない場合にはあまりおすすめできません。
とにかく、痴漢などという卑劣な奴らには、「屈辱」という言葉の意味を身を持って教えてやるのです。「人前で罵倒される」という屈辱。痴漢行為によって女が受ける屈辱と同等のもの、もしくはそれ以上のものを与えてやりましょう。
大事なことは、目には目を。屈辱には屈辱を。
さあて。これから暖かくなる季節。痴漢も増える時期になってきました。今年は何人潰せるか、なんだかわくわくしてきますネ! ←機嫌直ったみたいです。